勝手にされてる

 

 

 メカクシティアクターズを8話まで見てわかったのは、「こいつら勝手にイく気だな」ということで、それはこっちが力を抜いていようがいまいが、勝手にイかれたらムカつくのは当たり前のことで、「こっちはどうなるんだよ!」というフラストレーションが溜まる一方である。

 

 「勝手にされてる」感がやっぱりすごく強くて、例えば登場人物たちが「そういうことか!」とか驚いたときとかも、視聴者側としては「どういうことなの?」と、頭の中がハテナで一杯になる。そこで動画を一時停止して考えなきゃならなくなる。何でそういうことになるのかというと、このアニメは「時系列は視聴者側が組み立ててね」という作りになっているからであって、つまりそれは「原作を暗記してからこのアニメを見てね」ということと同義であって、その時点でまず普通の人はついていけないと思うんだよね。例えば8話で急に、「今、3話と4話のことを思い出せ!」って言われて、パッと思い出せるか?俺たちはコンピューターじゃないよ。

 

 だからこのアニメの登場人物たちが、「そうか!そういうことなのか!」とか驚いてても、視聴者としては「なんかこいつ勝手に一人で納得してるで~」みたいな、冷めた気持ちになるんだよね。「あの、全然こっちに説明してもらってないし覚えてもいないんですけど?」みたいな。すごくムカつくんだよね。

 

 キドちゃんがね、「自分の目の能力を失くしたい」って言うのよ。いつでもどこでも自分の存在感を消せる石ころぼうしみたいな能力ね。でも俺はそこで「何でー!?」って驚くわけ。便利やんか。これからの人生でいろいろ使えるで!って思っちゃうわけ。モモちゃんがね、自分の目の能力を煩わしいって思うのはわかるのよ。その能力のウザさみたいなのは序盤で描写されたし、実際にウザいと思うし。捨てたいよね、その能力。でもキドちゃんが自分の能力で悩むってのはよくわからない。恥ずかしがり屋の子に石コロ帽子なんて最高やん?だからそこで、石コロ帽子を捨てようとする思考が全然理解できないのよね。石コロ帽子で困ってる描写なんて今までされてないんだもん。もしかして、その石コロ帽子自体が、キドちゃんのトラウマの象徴だったりするから捨てたいわけ?だったらそれを描写なり説明なりしてもらわんと。

 

 まぁそういうのがこの作品の全てを表してると思うんだけど、「あなたの心は何でそうなったの?」みたいなのをあんまり説明しないのよね。で、それはたぶん全12話を見てもほとんど明かされないんだよ。俺たちが最終回を見てわかるのは、このアニメの世界の「仕組み」だけであって、「この世界はこうでした。チャンチャン」っていうのが最終回でわかるんだろう。でもそれだけだよね。要は、シンタローは何でこう思ったの?とか、キドちゃんはこのとき何を考えてたの、とか、ヒビヤくんは何を考えてるの?とか、そういうことは最後まで説明されないし、読み込む余地すら無いと思うんだよね。

 

 で、そういう心の読めない子たちっていうか、心を説明しない子たちが、いきなり驚きだしたり、突如エネちゃんにブチ切れたり、突然物事を理解しだしたりしても、見てる方としては「あーなんか勝手にやっとるわー」としか思えないんだよね。

 

 「説明なしでいきなり実演する」っていう見せ方があるのはわかるよ。でもそういう見せ方ってやっぱり工夫が必要だし、しかもその前に「そもそもこのアニメ実演してないやん!」っていうところに行き当たっちゃうんだよね。第8話を見てもわかるけど、登場人物たちがずーっと喋ってるだけなんだよ。病院で立ち話して、アジトで喋り倒して。だから、ニコニコのコメントでもよくあるんだけど、「これラジオでやれば良いんじゃない?」「紙芝居でいいんじゃない?」ってのは誰もが思うわけなんだよね(構図をポンポン変えたりシャフ度とかいうのを多様するのは動きが無さ過ぎるのをカバーするため?)。だから、登場人物たちの心もわからなければ、登場人物たちが行動もしない(じゃあ能力うんぬんの設定要らないじゃん)わけで、すごく珍しいアニメなんだよね。俺がこのアニメを見続けてるのも、「何なんだこのアニメは?」という好奇心が原動力なんだ。

 

 でも間違えないでほしいんだけど、その好奇心は好感にはつながらない。つまり、読み込むコストや考えるコスト、追いかけるコストをこちら側だけに負担させておいて、発信側は何も負担していないのはアンフェアだし不誠実だということ。その時点で、もう俺はじんさんに好感は持てないんだよ。

 

 最終回に至って、じんさんとメカクシのキャラたちが絶頂を迎えたとしても、視聴者側はイけないんだよね。快楽を与えてもらってないから。だから俺は今から最終回が楽しみなんだけど(まさか最終回も、どこかで駄弁る→どこかで駄弁る→なんか発見、で終わるわけはないよな・・・)、いったいどれくらい視聴者を置いてきぼりにしてくれるのかという、そこに今すごく期待してるんだ。この『メカクシティアクターズ』の、「勝手にされてる」感ってやっぱりすごく異質だよ。