霊的食物をとりなさい

 

 

 数日前に、香港の行政長官が「選挙を民主化しちゃったら貧乏人が影響力を持っちゃうじゃーん」とか言い出して、世界中の人間が「共産主義の人間がそんなことを言うの・・・?」ってビックリしましたよね。でもそういう本末転倒な転覆ってもう共産主義だけには留まっていないと思います。

 

 最近の欧米リベラルも何かパッとしませんよね。アラブの春はなんかモヤモヤしたまま中途半端に終わったし、ロシアはウクライナ問題の陣地取りでアメリカ・西欧を相手に立ち回り十分な成果を得ました。ISとかいうイスラムの組織は「俺たちの仲間になれば救われる!」という宣伝をして、それに呼応した欧米各国の社会的弱者・社会的孤立者がISに入隊をしようと今も画策を続けています。日本でも北海道大学の男性がISに入隊しようと計画していたので逮捕されましたよね。

 

 欧米のリベラルが最近あまり魅力的に見えないのは、まず世界全体がもうかなり貧しくなっているということにあると思います。グローバル経済やらなんやらで、世界中の労働者は国内での競争に留まらず、地球の反対側に居る他の労働者との競争もしなくてはならなくなりました。そしてそういった過酷な競争の勝者になったとしても、勝者の給料はほとんど上がらないのが現実です。世界の大多数の労働者たちの生活はジリ貧であり、経済的成長は止まっています。

 

 日々の生活がカツカツだと、私たちは意識を高く保つことができません。どこにあるのか解からない理想郷を実現することよりも、まずは毎日ご飯を食べることの方が人間にとっての先決問題だからです。現在の欧米リベラルが世界の人々に突きつけられているのは、「お前の言うことを聞いたらご飯が食べられるのか?」ということであり、一昔前のまだ豊かであった世界では欧米リベラルは様々な利益と引き換えに世界の人々の意識を高く保ってきましたが、欧米リベラルすら貧しくなった今は、彼らは大した利益を世界の人々に提示できなくなっているのです。たとえば今年ロシアがウクライナで上手くやりおおせたのは、口先だけでは介入するけれども、実際のブツは何も出せなかった欧米リベラルに原因があるのは明らかです。

 

 そしてもう一つの欧米リベラルの限界は、「政治的に正しい弱者」と「政治的に正しくない弱者」の区画整理を完了してしまい、もうそこからの流動性が望めないという点にあります。「欧米リベラルの庇護下に入れる弱者」と「欧米リベラルには承認されない弱者」の二分化が、世界の経済が貧しくなると共に進んでいるのです。そして、ISが今吸収しているのは、「欧米リベラルには承認されず(社会的支援は受けられない)、また私的領域でも承認されない弱者」たちであることは言うまでもありません。欧米リベラルがまだ豊かであったころは、経済を発展させることによって、政治的に正しくない弱者たちであっても、彼らがお金を使って何とか自助できるような社会システムを構築できていました。しかし経済が貧しくなり、また、「政治的正しさ」というものが人々の私的領域にまで影響を及ぼすようになったときに、政治的に正しくない弱者たちはリベラルの価値観が及ぶ範囲から逃れないと自分たちを維持できなくなってしまったのです。

 

 今世界中で右派が勢いを取り戻し、反欧米勢力が連日ニュースを賑わすのも、欧米リベラルに流動性が無くなり硬直化しているからに他なりません。欧米リベラルは今だに世界が豊かであったころの雰囲気で動くのですが、日々を頑張って生きている民衆・労働者は、そういった欧米リベラルたちの動きに従うのか、従わないのかを非常にシビアな目で判断しています。「彼らは口先だけで自由を謳って、現実的なことは何もしてくれない」ということがここ数年で完全に露呈してしまっているからです。

 

 全ては経済の問題なのです。私たちはおマンマを食べてからやっと次のことを考えられるわけです。おマンマの供給が途絶えてしまった以上、また「意識の低い」右派や反欧米勢力が台頭してくるのは必然なのです。ここから欧米リベラルは一体どうするのか。第三次世界大戦で特需を作り出すのか、それとも何かテクノロジーの大進歩が起きて人々の生活が良くなるのか。それとも「霊的食物で生きなさい」と人々に強要するのか。これからも私は注目していきたいと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

霊的パラダイスの中の懲りない面々 - 無知な親の振るう鞭。

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嘘つきアーニャの真っ赤な真実

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