反出生主義と交換論

 

 

「反出生主義」という考え方があります。人間は、その人生の中では幸福よりも不幸の方がはるかに多いので、生きるということは収支が必ずマイナスになることである、だったら最初から生まれてこない方が良い、という考え方です。その反出生主義の対極にある思想としては、「交換論」というものがあります。この交換論は、「生まれること、生きることは絶対に幸福である」という立場に立ちます。なので、交換論者は「我々人間はこれからも豚を食べ、豚の数を増やしていくべきである」ということを言います。「豚がこれだけ地球上に繁栄できているのは、我々が豚を食べてやっているおかげである。我々が豚を食べるから、豚の需要は維持され、その結果豚はまた生まれ、生きる喜びを感じられるのだ」という考え方をします。

 

 

 藤子・F・不二雄の作品に、『ミノタウロスの皿』という作品があります。宇宙を字自由自在に行き来できるほどの未来で、我々の子孫である男が、イノックス星という星に不時着します。そのイノックス星では、二足歩行の牛と人間が共存しており(牛が主人で人間が家畜)、人間は牛に食べられます。人間は牛に食べられることを名誉なことだと考え、いつか自分が牛に食べられることを夢見て日々を生きています。我々の子孫である男はその事実を知りカルチャーショックを受け、不時着した自分を助けてくれた人間だけでもなんとか牛に食べられないようにと奔走しますが、その男は、自分を助けてくれた人間からも憐みや嘲笑の目を向けられ、全ては徒労に終わり、最終的に人間は牛に食べられます。

 

 

 『ミノタウロスの皿』の中では、二足歩行の牛は徹底的に交換論の立場に立ちます。「我々が人間を食べなければそもそも人間も存在しないのだから(食用にならないんならとっくに滅ぼしてるわい)。お前の『人間を食べるな』という言説は人間の絶滅に繋がるぞい」と言うのである。

 

 

 『ミノタウロスの皿』に出てくる牛たちは交換論者ばかりで、反出生主義者の牛はいませんでした。仮に作中に反出生主義者の牛が出てきたらどうなっていたでしょうか。「俺ら牛が生きることは赤字。収支は終始マイナス(ダジャレ)。ほんと親に産んでほしくなかった。産まれたくなかった。で、それは人間だって同じなんだよ。あいつらの人生だって赤字なんだよ。例えあいつらの主観では幸福な人生を生きていることになってるとしてもな。だからもうあいつらを繁殖させるのはやめよう。俺らの繁殖も止めよう」と言うはずです。

 

 

 「と言うはずです」というのは嘘です。たぶん、『ミノタウロスの皿』に反出生主義者の牛が出て来ても、彼はその反出生主義の思想を、人にまでは適用しないはずです。だって人に適用しちゃったら、人のおいしい肉を食べながら生きていけないじゃん!反出生主義の牛が言う「生まれないほうが良い~」ってのはあくまで自分の種族に関してであって、人に適用するはずがないです。反出生主義者はおいしい肉を食べながら平和に天寿を全うし、子孫を残さずに、息を引き取りたいので。

 

 

 ここで我々の世界に帰ってきましょう。この星の、人間の、反出生主義者の方々に聞きたいのは、あなたのその反出生主義論を、この星の家畜にも適用できるか?ということです。もし適用できるのであれば、あなたの反出生主義論は立派であり、それなりの思想的強度を持ちます。ところが、「いや家畜はまた別で~」みたいなことを言うのなら、もはやその反出生主義論に思想的強度はありません。「自分さえよければ良い」という考え方でしかなくなります。「生まれてくる『人の子』はカワイソウだけど、人に食べられるために生まれてくる『豚の子』はカワイソウじゃない」というのは、どういうことですか?

 

 

 「人間にのみ反出生主義を適用する」と言う方々は、自身は平和においしい肉を食べながらベッドで安らかに天寿を全うするつもりかもしれませんが、そんなことはできませんさせません。「人間にのみ反出生主義を適用する」ということは、人間が滅びていく道です。その道では、我々は人間が持つ様々な特権・特権的地位を動物に明け渡していかなければなりません。「人間にのみ反出生主義を適用する」と言う方々は、自身の特権や特権的地位を動物に明け渡してから死ななければなりません。動物に生存競争で負けてから死ななければなりません。だから、「人間にのみ反出生主義を適用する」と言う方々は、平和においしい肉を食べながらベッドで安らかに天寿を全うすることはできません。負け続けの最期になるはずです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宝石の国 第1話「フォスフォフィライト」

http://www.nicovideo.jp/watch/1507261222

19分38秒からのシンシャのセリフ 『俺はここでさらわれるのを待っている。月でなら、俺に価値を付けてくれるかもしれない。ずっと待っているが来ない。だが、昨日お前が現れた途端あぁだ。お前は良いな。敵にすら愛されて』

 

 

宝石の国 第8話「アンタークチサイト」

9分13秒からのフォスフォフィライトのセリフ 『せっかく生まれたのにね・・・』

http://www.nicovideo.jp/watch/1511754381

 

 

Marilyn Manson - The Beautiful People

https://www.youtube.com/watch?v=Ypkv0HeUvTc

 

 

Marilyn Manson - This Is The New Shit

https://www.youtube.com/watch?v=u21aTl7lmHw

 

 

Marilyn Manson - The Fight Song

https://www.youtube.com/watch?v=9GFI6Rf-IkI

 

 

正義はなされよ,よしや世界が滅ぶとも

http://masudamaster.hatenablog.jp/entry/2017/11/10/113530

 

 

道徳的動物日記

http://davitrice.hatenadiary.jp/

 

 

『死に惹かれるのは死なない立ち位置にいる者の特権だ』 - 『スクールゾーン』横槍メンゴ ビッグコミックスぺリオール 2017年11月24日号 

 

 

はてなブックマーク - 安楽死を合法化発表を受け、1分で苦痛なく安らかな死につけるハイテク自殺幇助マシンが発表される(オーストラリア) : カラパイア

http://b.hatena.ne.jp/entry/karapaia.com/archives/52250373.html

 

 

 

 

 

 

 

 

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